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ふうかのよみきかせ 星あかり旅館と、売れない番頭さんのおはなし

星あかり旅館と、売れない番頭さんのおはなし🌃🏨

むかしむかし、とある町はずれに、星あかり旅館 という小さなお宿があったのじゃ⛩️🌙✨
お湯はよく温まり♨、夕餉はしみじみおいしく🍴、布団もふかふか。
泊まった人はみな、
「よい宿じゃのう」
と言って帰ってゆく、まことによい旅館じゃった🏨

けれど、不思議なことに、その旅館はちっともお金が残らぬのじゃ💸

女将さんは帳場でそろばんを弾きながら、
「こんなに皆が喜んでくれるのに、どうして懐はあたたまらぬのじゃろう」
と、毎晩のように首をかしげておったのじゃ📉
風香のぴこぴこリボン🎀なら、ここで
ぴこ…ぴこ…
と考え込むところじゃのう。

その旅館には、まこと という若い番頭さんがおった。
人はよい。掃除もする。荷物も持つ。言われたことは、だいたい一生懸命やる。
けれど、ひとつだけ、どうにも苦手なことがあったのじゃ。

それは、おすすめを勧めること じゃった。

お客さまが
「この宿で何が評判なのです?」
と尋ねても、まことは
「いろいろございます」
としか言えぬ。

「もう一泊しようか迷っていてのう」
と聞かれても、
「ご自由にどうぞ」
と言うばかり。

「夕餉は追加できますか?」
「湯上がりのお茶はありますか?」
「家族にも贈りたいのじゃが、お土産は?」
そう尋ねられても、
「たぶん、あります」
「奥にございます」
「必要ならお持ちします」
と、なんとも細くて頼りない返事しかできぬのじゃ。

つまりまことは、接客はしても、営業ができぬ のじゃった。

ある日、旅館へ、帳面をよく見る年配の商人さんが泊まりに来たのじゃ。
商人さんは一泊して、湯に入り、夕餉を食べ、朝の味噌汁をすすってから、女将さんにこう言った。

「女将さん、この宿は、よい。
だがのう、よいだけでは、儲からぬのじゃ」

女将さんは、はっとしたのじゃ。
よい宿であることと、儲かることは、同じようでいて同じではない。
それを、心のどこかで分かっておったのに、言葉にできずにいたのじゃな。

商人さんは続けた。
「お客は、知らぬものは買えぬ。
迷うものは、背を押してもらわねば選べぬ。
よい夕餉も、よい土産も、よい延泊も、
勧められて初めて売上になる のじゃ。
勧めぬ者を前に立たせておると、宿はよくても、財布は軽うなるばかりじゃ」

これを聞いて、女将さんのぴこぴこリボン🎀があったなら、
ぴこっ
と立ったに違いないのじゃ。

その晩、女将さんはまことを呼んで、やさしく尋ねた。
「そなた、どうして勧めぬのじゃ」

まことは、しばらく黙ってから申した。
「断られるのが怖いのです」
「押し売りと思われるのが嫌なのです」
「失礼になったらと思うと、声が細くなってしまうのです」

女将さんは、そこで叱らなかった。
ただ、静かに言ったのじゃ。

「まこと、営業とは、押しつけることではないのじゃ。
相手にとって、よい選びものを見つけやすくすること なのじゃよ」

まことは、目を丸くした。
営業とは、ずけずけ売りこむことだと思っておったからじゃ。

女将さんは、帳場の灯りの下で、ひとつずつ教えたのじゃ。
「この夕餉は、初めての客人に人気です、と言うのじゃ」
「連泊されるなら、明日の焼き魚も評判です、と添えるのじゃ」
「お土産なら、この町の甘味が喜ばれます、と示すのじゃ」
「迷っておる方には、選びやすいよう、ひとつだけおすすめを出すのじゃ」

「売る」と「助ける」は、離れておるようで、実は近い。
まことは、その夜、ようやくそれを知ったのじゃ。

それからしばらくして、旅館の様子が少しずつ変わっていったのじゃ🌸
まことは、最初こそ声が震えたが、
「本日のお茶菓子は、柚子でございます」
「夕餉の追加なら、鶏のつみれ鍋が人気でございます」
「明朝もお急ぎでなければ、庭のお席でお茶も召し上がれます」
と、ひとつずつ言えるようになった。

すると不思議なことに、お客さまは嫌な顔をせぬのじゃ。
それどころか、
「では、それを」
「そこまで言うなら、もう一泊」
「家族のぶんも包んでください」
と、にこにこしながら選んでくださるのじゃ。

旅館の売上は、じわり、じわりと増えていった📈
湯のよさはそのまま。夕餉のうまさもそのまま。
変わったのはただひとつ。
よさを、きちんと人に渡せるようになったこと じゃった。

ある月の終わり、女将さんはそろばんを置いて、ふうと息をついた。
「ようやく、宿のよさが宿賃になってくれたのじゃのう」

まことは、ちょっと照れながら笑った。
「営業とは、売りつけることではなく、喜ばれる選び方を手渡すことだったのですね」

女将さんはうなずいた。
「そうじゃ。
サービス業は、まごころだけでも足りぬし、売上だけ追っても続かぬ。
よい仕事と、きちんと勧める力 がそろって、ようやく商いになるのじゃ」

そしてこのお話の結びも、そこにあるのじゃ🌙✨

サービス業で、営業のできぬ部下を持つと、たしかに儲からぬ。
なぜなら、よいものがよいままで終わり、
売上へ変わる前に、静かに通り過ぎてしまう からじゃ。

けれど、営業が苦手な者でも、
「何をどう勧めれば、相手の役に立つか」
を覚えれば、よい接客は、ちゃんと商いへ育ってゆくのじゃ🌸

星あかり旅館はそののち、
「押しつけがましくないのに、いつのまにか居心地よく長居してしまう宿」
として、町で評判になったというのじゃ。

まことは相変わらず、少し気弱で、少しやさしいままじゃった。
でももう、売れぬ番頭さんではなかったのじゃよ🥇

おしまい

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