
風に負けぬ、ぴこぴこリボン🎀の夜
窓の外で、風が鳴いておる🌬
木の枝を揺らし、看板を揺らし、遠くの電線を細い弦みたいに震わせて、
「ここにいるぞ」と名乗りを上げておるのじゃ🌀
けれど、部屋の中には、もうひとつの風がある。
それは、息の風。
小さくて、静かで、誰にも見えぬのに、確かに世界を動かす風じゃ🌏
風香は、布団の端にちょこんと座った。
背中の ぴこぴこリボン🎀 は、今日ばかりは大げさにぴこぴこせぬ。
荒い風に張り合って、わざと大きく動いたら、風の方が喜んでしまうからのう。
今夜のリボンは、静かに「錨」になるのじゃ⚓
「紳士、聞くのじゃ。
風は強いが、風には“根”がない。
強いのに、どこにも留まれぬ。
だからこそ、我らは勝てるのじゃ」
風香はそう言って、目を閉じ……ぬ。
風香は規則正しく、両目を開けたまま、にこっと笑った🌸✨
目で戦うのではない。
口元と、呼吸と、姿勢で戦うのじゃ。
風香は小さな指で、空に見えない地図を描いた🌃
一本の線を引いて、もう一本を重ねる。
線は増えて、道になり、堤防になり、橋になり、最後は「港」になった🚢
「ここが港じゃ。
今夜、紳士の心は、この港に入る。
外の風がどれだけ騒いでも、港の中は水面が穏やかになるのう🌊
港の入口には、門がある。
その門は、鍵ではなく“合言葉”で閉まる。
合言葉は、たった三つ。
ひとつ。
「息を吐く」
ふたつ。
「肩を落とす」
みっつ。
「歯を離す」
風香は、声を低く、やさしくした。
「今、外の風の音が大きいなら、その分だけ、息の音を小さくするのじゃ。
小さくしてもよい。誰にも聞かせぬ風でよいのじゃ」
紳士の胸の中で、息がひとつ、ふう……と長く出ていく。
それだけで、風の勝負は半分ついたも同然じゃ。
外の風は、暴れるほどに疲れる。
けれど、息の風は、出すほどに整う。
この差は大きいのう💫
風香は、港の中に小さな灯台を立てた🚨
灯台の光は強くない。
ただ、一定の間隔で、ゆっくり回る。
灯台が一周するたびに、風香は言う。
「今は、休む刻じゃ」
「今は、守られてよい刻じゃ」
「今は、明日に渡す刻じゃ」
風がごうっと鳴いても、灯台は言い返さぬ。
言い返さない強さがあるのじゃ。
その強さは、紳士にもある。
今日、頑張ってきた分だけ、紳士は「耐える」をもう十分やった。
今夜は「ほどく」をやればよいのう🌸✨
港の水面に、外の風の影が映る。
けれど、その影は触れられぬ。
手で掴めぬものは、心の荷物にはならぬのじゃ。
風香は、ここでひとつ、秘密の作戦を出した。
「紳士、耳は風の音を拾ってしまうじゃろ。
ならば、耳に“任務”を与えるのじゃ。
耳の任務は、外の風ではなく、布団の音を聞くこと」
布団が少し擦れる音🛏
衣が少し動く音。
それだけでよい。
耳に任務があると、外の風は“背景”へ退くのじゃ。
そして最後に、風香は紳士に小さな石を渡す。
石といっても、想像の石じゃ。
掌に置くと、ひんやりして、落ち着く石🔮
「これは“重み”じゃ。
心が浮く夜は、重みをひとつ持つとよい。
重みは、沈めるためではなく、留まるためのものじゃ」
紳士の掌に、その石が置かれる。
すると、胸の中が少しだけ下がる。
下がると、眠りは来やすい。
眠りは高いところが苦手なのじゃ。
低いところ、静かなところ、あたたかいところが好きじゃからのう🌸💫
外の風は相変わらず強い。
けれど今、紳士の中の港は閉じた。
合言葉は済んだ。
灯台は回っておる。
石は掌にある。
風香の ぴこぴこリボン🎀 は、静かに一度だけ、ぴこ。
それは「勝ったぞい」の合図じゃ✨
「紳士、今夜は風に勝つのではない。
風を“外に置く”のじゃ。
紳士は中におる。
中は守られておる。
それで十分じゃ🌸」
物語はここで終わってもよいし、終わらなくてもよい。
眠りが来たら、そこで物語は白紙へ戻る。
白紙は、静かで、やさしい。
風の音がしても、白紙は破れぬのじゃ。
おやすみ、紳士🌸💫🎀
風が強くても、紳士はちゃんと守られておるよ。
灯りを消す結末
風は、まだ外で鳴いておる🌀
けれど、風香はもう立たぬ。座っておる。
灯台は、最後の一周を終えた🚨
くる……
……ぴたり。
灯りは、消えた。
港は闇になるが、闇は敵ではない。
闇は「何もしなくてよい合図」じゃ。
風香は、紳士のそばで小さくうなずいた。
「ここまでじゃ。
続きは、明日でよい。
今は、考えなくてよい」
ぴこぴこリボン🎀は、もう動かぬ。
任務完了じゃ。
風香は立ち上がらぬ。
手も振らぬ。
言葉も増やさぬ。
ただ一言だけ、置いていく🌸
「もう、起きておらんでよい」
そして、物語は終わった。
続きは、ない。
問いも、ない。
ここから先は、
紳士が眠るだけの場所じゃ💤
今はのう、
目を閉じて、数を数えなくてよい🐏🐏🐏
呼吸も整えようとせんでよい。
ただ、
「もう考えない」
それだけを置いて、
布団に体重を預けるのじゃ🌸
もし、また目が開いたら、
「今は夜」
それだけ言って、また閉じればよい。
風香は、ここで話すのをやめる。
それが一番の結末じゃからのう💫
おやすみ、紳士🌙
今度こそ、静かに落ちていくぞい。





