
🌸 ちいさな光の庭
ある夜のことじゃった。
町のはずれにある、だーれも気づかないちいさな庭に、ぽつんと光るホタルの精が舞い降りたのじゃ。
「こんばんは。今日も、ひとりぼっちかの?」
庭の真ん中に咲くちいさな白い花が、ふわっと揺れて答えた。
「うん。でも、夜風が気持ちよくて、ちょっと幸せなんだよ」
ホタルの精は、くすっと笑って、ひとつ光を灯したのじゃ。
その光は、まるで眠れぬ夜の心にぽっと咲く、安心のひかり。
「今夜は、わらわも一緒にいてあげよう。おしゃべりしてもいいし、黙っていてもいい。おぬしが眠くなるまで、ここにおるぞ」
白い花は、はにかんでこう言った。
「ありがとう……ねぇ、また来てくれる?」
「もちろんじゃ。おぬしが眠れぬ夜には、いつでも、な」
そして、ふたりは静かに夜をすごしたのじゃ。
しゃらしゃらと葉の音、ふわふわの風。
どこからともなく聞こえる虫たちの子守唄。
……そんな光の庭は、実は紳士の心の中にもあるのかもしれぬのぅ。
